見渡す限りの赤褐色の岩肌は、まるで岩が真夏の太陽で日焼けしたようだ。赤褐色の岩肌にぽっかりと穴が開き、その中を雲がゆっくりと流れていく。激しく照りつける夏の太陽をしばし忘れさせてくれる。この穴の開いた岩は、Arches(アーチ橋)と呼ばれ、Arches National Park(アーチズ国立公園)には、309 km²の敷地内にその数2,000を超える石のアーチ橋が並んでいる。
なぜこのようなアーチ橋が多くここに存在するのかには、秘密がある。それはこの一帯が太古に形成された岩塩層の上に立つためである。3億年前にこの一帯を覆っていた海の置き土産だ。その上に砂、泥などの堆積物が覆いかぶさり、圧縮され、堆積岩を形成していった。岩塩層はその重さで不安定となり、ずれたり、くずれたり、流動化したりした。これにMoab Fault(モアブ断層)の活動が加わり、上を覆う堆積岩に亀裂が入り、岩石の表層部から浸食で削られていった。雨が亀裂から入り込み、氷結し、亀裂を広げていく。風が弱い部分を削りとっていく。こうしたプロセスの積み重なりで、岩石のもろい部分は削り取られ、比較的強い部分が残され、アーチ橋が形成されていった。従って、浸食がさらに進めば、アーチ橋も崩れ去り、なくなってしまう。アーチ橋の姿を見ることができるのは、この時代に生まれた私たちの幸運かもしれない。
夏はとにかく乾燥していて暑いので、水をたっぷり持っていこう。US191号線から17.7マイル(28.3km)のツアー用の道路が園内に伸びているので、これを走りながら、世にも不思議な風景を楽しもう。車を進めて最初に出会う風景は、西部劇に出てくるような赤褐色の岩石の彫刻が並ぶ場所、Park Avenue(公園通り)だ。ここからはCourthouse Towers(宮廷の塔)と呼ばれる岩石のタワーを見ることができる。中でもおもしろいのはThree Gossips(噂話をする3人)とTower of Babel(バベルの塔)だろう。
噂話をする3人
バベルの塔
そこから進めると石が波打って見えるPetrified Dunes(石になった砂丘)を望むことができる。
石になった砂丘
また、ルートの中ほどには、今にも崩れ落ちてしまいそうなBalanced Rock(バランス岩)があり、必見。
バランス岩
その先を右に入ると、Garden of Eden(エデンの園)に続き、お待ちかねのアーチ橋を見ることができる。The Windows(窓)と呼ばれるセクションには、いくつかのアーチ橋が固まっている。中でもNorth Window(北の窓)、South Window(南の窓)のWindowsやその向かいにあるDouble Arch(二重アーチ)は有名だ。窓の隣にあるTurret Arch(砲塔アーチ)も独特の形をしている。
Windows
二重アーチ
砲塔アーチ
このWindowsのアーチに登ると、風が吹き、日陰となっていてすずしい。ひとときの憩いの場だ。
二重アーチの隣に位置するParade of Elephants(像のパレード)と呼ばれる巨岩もなるほど名前のような形をしていて興味深い。
像のパレード
この先さらに車を進めてDelicate Arch(デリケート・アーチ)はぜひとも見ておこう。アーチズで最も有名な場所である。
デリケート・アーチ
さらに車を進めるとFiery Furnace(火炎炉)、Devil's Garden(悪魔の園)というおどろおどろしい名前の場所に到達する。
火炎炉
悪魔の園への入り口
悪魔の園には人気のトレールが整備されており、このトレールをたどるとさらに多くのアーチ橋を見ることができる。この中でも、今にも折れそうなLandscape Arch(景観アーチ)、Double-O Arch(2重のOの橋)は特に見ものである。そしてトレールの終点にはDark Angel(ダーク・エンジェル)がそびえ立っている。こんな灼熱の中でも自然は生きており、悪魔の園トレールを歩いているとき、鹿が松の木陰で泰然とこちらを眺めていた。
景観アーチ
2重のOの橋
ダーク・エンジェル
悪魔の園の周辺にも、Skyline Arch(スカイライン・アーチ)、Broken Arch(壊れたアーチ)、Sand Dune Arch(砂丘アーチ)などの見事なアーチが点在する。
スカイライン・アーチ
壊れたアーチ
砂丘アーチ
未舗装の道でしかアクセスすることができないKlondike Bluffs(クロンダイク断崖)にも、きれいなTower Arch(タワー・アーチ)が潜んでいる。
アーチズ国立公園では、他の場所ではなかなか目にすることのできないアーチ橋にいくらでも出会うことができる。さながら自然の彫刻の展覧会場となっているかのようだ。
(国立公園局のHP)
(国立公園局の地図)(PDF)