サウスダコタ州の南西部。荒涼とした乾いた土地に色とりどりの堆積岩の地層がむき出しになり、少しでも尖った地層は、風や河水が容赦なく削り取っていく。険しい谷、鋭い尾根、深い峡谷、丸く突き出たこぶ状の丘、鋭く延びる尖塔、そこは、旅人が避けたくなる、人を寄せ付けない雰囲気を漂わせている。スー族は、その土地を
mako sica(Bad Land:悪い土地)と呼んだ。乾燥した堆積地層が風や降雨による浸食を受け、色とりどりの地層をむき出しにしているフォーメーションをバッドランドと一般的に呼ぶ。同様の地形は、
セオドア・ルーズベルト国立公園や
ペトリファイド・フォーレスト国立公園でも見られる。
今から7,500万年まえにはここは浅い海の底であった。6,900万年前ごろには海は引いていき、堆積した砂や泥は空気にさらされ、地層は黄色く変化した。5,000万年ほど前、ロッキー山脈の隆起に伴い、低地であったこの土地に、風や河川が少しずつ、砂や泥などを蓄積していった。今から3,700万年前から3,400万年前には、低地の湿地帯で、幾筋もの川が流れ、現在の哺乳類の祖先が栄華をものにしていた。時折生じた洪水が土砂を積もらせていった。3,400万年前から3,000万年前には気候の変化により、湿潤な気候から乾燥した気候に変化し、この土地は草原地帯へと変わった。その間も自然の営みは続き、ロッキーから河川により砂や泥が運ばれ積もり続けた。3,000万年前ごろには西側の現在のイエローストーン付近で大噴火が起き、この地方に大量の火山灰をもたらし、砂や泥の上に厚く積もった。その上にまた風や河川の作用により土砂が覆いかぶさっていき、火山活動が火山灰を降らし積もらせていく。ときおり押し寄せるストームによる洪水が乾いた大地を押し流し、彫刻刀を入れるように、地形を刻んでいく。こうしてバッドランドは形成されていった。現在でも風と時折のストーム時の洪水により1年に1インチ(3cm)ずつ浸食が進行している。今から50万年後には消えてなくなる運命だ。
このBadlands National Park(バッドランド国立公園)は、ノース・ユニットとサウス・ユニットに別れ細くつながっているが、アクセスはほとんどノース・ユニットに限られる。サウスダコタ240号線がノース・ユニットを横断しているので、これをドライブしながら、様々な色彩とフォーメーションを見せるバッドランドを眺めることができる。
その中でも黄色と灰色の層を探して見よう。黄色の層はかつて海底にあり、海が退いた後、陸上で乾燥した層で、灰色の層は火山灰が厚く降り積もった層だ。黄色の層が見られるバッドランドは、Yellow Mounds(イエロー・マウンズ)と呼ばれ、その鮮やかな色彩には驚かされる。
イエロー・マウンズ
ビジターセンターの近くは、まるで自然の彫刻の中を縫ってドライブしているような感じさえする。
また、バッドランドは、緩やかな堆積土砂で形成されているため、化石の保存状態がよく、3,700万年前から2,300万年前の現代の哺乳類の祖先の化石が数多く発見されている。サイ、馬、ブタ、猫などの祖先の化石が発見されている。
化石ばかりではなく、生きている野生動物も豊富で、バッファロー、プロングホーン、ビッグホーン・シープ、プレーリードッグなども保護されている。
プロングホーン
かつてはバッドランドは乾燥した険しい土地であったため旅人を寄せ付けなかったが、今ではその地形のため旅人を引き寄せている。時代が変われば人々の考え方も変わる。自然の方は人間の気まぐれに笑っているかもしれない。
(国立公園局のHP)
(国立公園局の地図)(PDF)
バッドランドのきれいな写真は、
ここで見ることができます。