五大湖は様々な風景を楽しませてくれる。砂岩の洞窟やカラフルな地層の次は、砂丘である。ミシガン州の北西部に、ミシガン湖の東岸に当たる部分に砂丘が形成されている。Sleeping Bear Dunes(スリーピング・ベア砂丘)と呼ばれる砂丘である。Sleeping Bear Dunes National Lakeshore(スリーピング・ベア砂丘国立湖岸)には、この砂丘に加えて、Aral Dunes(アラル砂丘)など35マイル(56km)の湖岸、沖合いにある南北のManitou(マニトウ)島からなる公園である。
アラル砂丘とスリーピング・ベア砂丘は形成過程が違う。アラル砂丘は、氷河が残した土砂を西風やミシガン湖の波が長年かけて打ち上げたものだ。一方のスリーピング・ベア砂丘は少し高台に氷河の置き土産で残された土砂の山だそうだ。砂丘は生きており、刻一刻と姿を変えている。その証拠に砂丘の砂で一度埋まった木々が砂丘の移動後、再び地上に顔を出している光景(ghost forest:幽霊の森)に出会う。スリーピング・ベア砂丘は過去2回大きな土砂崩れを起こし、ミシガン湖に大量の土砂を流し込んでいる。砂による埋没の危険のため、コーストガードの基地も1931年に一度場所を変えている。また、この辺りは航海の難所で、南マニトウ島には
灯台が設置されているが、島の南には、1960年に座礁した
Francisco Morazan(フランシスコ・モラザン)号の残骸が今も残っている。
このスリーピング・ベア砂丘ができたいわれには、別の話が
チッペワ族に伝わっている。現在のウィスコンシン州で母親熊と2匹の小熊が暮らしていたが、ある日森が大きな火事になり、燃え盛る炎から逃げるため3頭の熊はミシガン湖に飛び込んだ。熊は一生懸命対岸を目指して泳いだが、ミシガン湖は大きく、次第に2頭の小熊が遅れていった。母親熊は後ろを振り返りながら泳いでいたが、小熊は遠くに離れてしまった。母親熊はやっとの思いで対岸にたどりつき、小熊の姿を探すため、崖の上に登り、懸命に小熊を探した。しかし、小熊は見えなかった。2頭の小熊は対岸までもう少しというところで力尽きてしまったのだった。それでも母親熊は小熊を待ち続けた。この姿に神様が心を打たれ、母親熊を眠らせ砂で覆い、スリーピング・ベア砂丘に変えるとともに、2頭の小熊を沖合いにある南北のマニトウ島の姿に変えたと言われている。
スリーピング・ベア砂丘
スリーピング・ベア砂丘には7マイル(11km)のPierce Stocking Scenic Drive(ピアース・ストッキング景観ドライブ)が設けられており、これを周れば、ざっと砂丘とその周辺の風景を見ることができる。だが、せっかくここまで来たのであれば、砂丘登りにチャレンジしてみよう。普通の登山とは違い、足元が砂だと登っても登ってもなかなか上に到達しない。十分に水を持っていこう。ミシガン湖側は
急傾斜となっている。母親熊の砂丘の上から2頭の小熊の化身
南北のマニトワ島を眺めてみよう。そこまではという人はビーチで一休みもできる。南北のマニトウ島にはフェリーで渡ることができる。コーストガードの博物館やかつて19世紀に製材所や波止場の町として賑わったGlen Haven(グレン・ヘイブン)の町も近くにある。
*ピアース・ストッキングは、かつてこの付近に製材所を持っていた人物で、後にスリーピング・ベア砂丘が国立湖岸として保護される前に公園として運営していた。
(国立公園局のHP)
(国立公園局の地図)(PDF)