オハイオ州の
Cuyahoga River(カイヤホガ川)は、Mohawk(モホーク族)の言葉で、「曲がった」川を意味し、その言葉どおり、大きくU字型を描いて、オハイオ州の大都市Cleveland(クリーブランド)を通り、五大湖の一つLake Erie(エリー湖)に注ぎ込んでいる。そのうち、クリーブランド近くの22マイル(35km)とその周辺の渓谷は、Cuyahoga Valley National Park(カイヤホガ渓谷国立公園)に指定されている。クリーブランド郊外に残された貴重な自然は、大都市の住民の憩いの場となっている。ここには、カイヤホガ渓谷の自然とこれを開拓した初期アメリカの農場、運河や鉄道の跡が残っており、自然と産業史が共存する公園と言えよう。中西部ながらどことなくニューイングランドの雰囲気がする。
カイヤホガ川
カイヤホガ渓谷国立公園は、国立公園に指定されているが、どちらかと言えば、大都市近郊に存在する国立レクリエーション地域のような感じがする。それもそのはずで、2000年に国立公園に昇格するまでは国立レクリエーション地域であった。公園内には125マイル(200km)以上のトレールが整備されており、手軽なハイキングやサイクリングに丁度よい公園となっている。秋には紅葉が美しい。
公園中央部には、カイヤホガ川が南から北に流れ、これに沿ってOhio & Erie Canal(オハイオ=エリー運河)が整備された。オハイオ=エリー運河は、エリー湖と州の南を流れるオハイオ川とを結ぶ総延長308マイル(493km)の運河で、146の水門が設けられ、1832年に完成した。運河の構想は18世紀末からあったが、連邦政府の資金が得られなかったため、オハイオ州がCanal Commission(運河委員会)を立ち上げて整備を行った。1840年代、50年代は、最も運河の利用が盛んであった時期で、南北戦争以降は鉄道の整備が進展し、運河は競争力を失っていった。それでも1913年の洪水で壊滅的な打撃を受けるまで、規模を縮小しながら運営は続けられた。今日では、運河の曳き舟道は、人気のウォーキング、サイクリングのコースとして利用されている。公園の中ほどには1836年に建てられたBoston Land & Manufacturing Company(ボストン土地・製造会社)の店舗であったBoston Store(ボストン・ストアー)があり、ここには、運河に関する展示が置かれ、ちょっとした運河博物館になっている。
オハイオ=エリー運河
また、カイヤホガ川に沿って、
Cuyahoga Valley Scenic Railroad(カイヤホガ渓谷景観鉄道)がクリーブランドからキャントンまで走っており、
鉄道に乗りながらカイヤホガ渓谷の景色を楽しむことができるようになっている。もともとは1880年に、オハイオ州東部のTuscarawas River Valley(タスカラワス川渓谷)で産出される石炭をクリーブランドやAkron(アクロン)などに運搬するために整備された鉄道であり、その後、Baltimore & Ohio Railroad(ボルティモア=オハイオ鉄道)に吸収され、1972年に景観鉄道として切り離されたものである。サイクリングを楽しむ人が多いせいか、自転車も一緒に運んでくれるようだ。
Brecksville Station(ブレックスビル駅)
公園内には、かつての開拓者の家であるFrazee House(フレイジー・ハウス)、開拓者の農場を保存する
Hale Farm & Village(へール農場・村)、Everett Road(エベレット道路)にある
Covered Bridge(屋根付き橋)などが点在し、かつての雰囲気を味わうことができる。季節になると、Farm Market(ファーム・マーケット)が立ち並び、Hunt Farm Visitor Information Center(ハント農場ビジター・インフォメーション・センター)の近くでも取れたてのトウモロコシをゆでたものが売られ、行列ができるほど人気となっている。
フレイジー・ハウス
カイヤホガ国立公園で最も有名な風景は、公園の中ほどにあるBrandywine Falls(ブランデーワイン滝)であろう。60フィート(20m)の高さから4億年前に形成された岩に落ちる様子は見ごたえがある。カイヤホガ川に東から注ぎ込むTinkers Creek(ティンカーズ川)の周囲は少し切り立って崖になっており、Bridal Veil Falls(ブライダル・ベール滝)は見所の一つとなっている。
Blue Hen Falls(ブルー・ヘン滝)も美しい。
ブランデーワイン滝
ブライダル・ベール滝
この他Happy Days Visitor Center(ハッピー・デイズ・ビジターセンター)の近くにあるLedges(レッジ)と呼ばれる巨岩の森がある。これは3.2億年前の砂岩が浸食を受けて形成されたもので、森の中に巨岩が剥き出しになっており、おとぎ話に出てきそうな雰囲気である。
レッジ
カイヤホガ渓谷国立公園は、他の国立公園のような派手さはないものの、様々な楽しみ方があるので、その全てを満喫するには、何度も訪れる必要があるかもしれない。
(国立公園局のHP)
(国立公園局の地図)(PDF)
カイヤホガ渓谷のきれいな写真は、
ここにあります。