ワシントン・ダレス空港に着陸する前に飛行機から下を除くと、北ヴァージニアの森が辺り一面に広がり、その中を切り開いて宅地造成が進められている様子がよくわかる。初めてイギリス人が北ヴァージニアを訪れたとき、辺りはひたすら森が続いていたことが想像される。Prince William Forest(ウィリアム王子の森)は、全米でも有数の人口増加地域である北ヴァージニアに残された大きな森である。1万6千エーカー(65平方キロ)の森は、ポトマック川に注ぎ込むQuantico Creek(クワンティコ川)の源流が保全される場所ともなっている。
クワンティコ川南支流
アパラチア山脈の東に山並に並行してPiedmont Plateau(ピエドモント台地)が広がっている。この台地の東端に位置するのが、ウィリアム王子の森である。ヴァージニア植民地では、タバコ栽培が盛んとなり、タバコ栽培のため多くの原生林が伐採された。タバコ栽培は土壌を疲弊させ、18世紀の中頃までには、これらの土地は不毛の地と化してしまった。1898年にはクワンティコ川の辺で黄鉄鉱が発見され、Cabin Branch Pyrite Mine(キャビン・ブランチ黄鉄鉱採掘所)では1920年まで硫黄の採取が行われた。1930年代には、この付近はChopawamsic Recreation Demonstration Area(チョパワムシック・レクリエーション実証地域)に指定され、再植林活動が行われるとともに、キャンプを楽しめるようにCivilian Conservation Corps(市民環境保全部隊)によって道路、橋、丸太小屋などが整備された。また、この森には、第2次世界大戦中には、Office of Strategic Services(戦略諜報局)の訓練施設が置かれ、いわゆるスパイの養成が行われたという知られざる過去もある。戦後は、国立公園局に移管され、1948年に森のある郡の名前からウィリアム王子の森と改名された。
ウィリアム王子の森
現在では、ウィリアム王子の森は、キャンプ、ピクニック、ハイキング、サイクリングなどを楽しむ場所となっている。ここには、37マイル(59km)のトレール、21マイル(34km)の自転車道が整備されており、ちょっと自然を楽しむのによい場所となっている。また、かつてスパイが学んだキャビンでキャンプをすることもできる。ここでは、ゴミは持ち帰る方針がとられており、公園内にゴミかごはない。残すのは足跡のみを実践しよう。
自転車道
(国立公園局のHP)
(国立公園局の地図)(PDF)