ジョージア州とフロリダ州の州境近くの大西洋沖にCumberland Island(カンバーランド島)と呼ばれる島がある。長さ17.5 マイル (28 km) の細長い島は、土砂が波により打ち寄せられてできた堡礁島の一種である。この島へは道路によるアクセスはなく、対岸のSt. Mary(セント・メアリー)からツアー船に乗る必要がある。島への上陸者も300名/日を超えないようにコントロールされており、ハイキング、サイクリング、海水浴、ビーチの散歩、貝殻拾いなどで、静かな時間を過ごすことができる。カンバーランド島の名前は、ジョージア植民地の創始者
James Oglethorpe(ジェームズ・オグレソープ)がイギリスのカンバーランド候にちなんでつけたものである。
この島は、本土に近い部分から大西洋側に向けて大きくその様相を変え、驚かされる。島の西側には、一面に湿地帯が広がる。潮の満ち引きにより海水が流れ込み、豊かな栄養素がもたらされる。背高の草が生い茂り、その隙間を水が満たしている。豊かな栄養素と草原の隠れ家を得て、小さな魚や貝、カニなどが繁殖し、それを狙って鳥類やアライグマなどが集まってくる。カンバーランド島には野生の馬も棲んでおり、ゆっくりと塩辛い草を食んでいる。
湿原を超えると、スペイン苔が生えた樫の木やヤシの木の鬱蒼とした森が広がる。さながら密林のジャングルのような景色が展開している。この中のトレールを歩くと未開地を歩むような感じがする。カンバーランド島のジャングルの中には、かつて鉄鋼王
Andrew Carnegie(アンドリュー・カーネギー)の弟のThomas Carnegie(トーマス・カーネギー)夫妻が建てた別荘の残がいが滅び去った文明の遺跡のような姿をさらしている。1783年に独立戦争の英雄Nathaniel Green(ナザニエル・グリーン)将軍はカンバーランド島に土地を購入し、その未亡人Catherine Greene(キャサリン・グリーン)が貝殻を細かく砕いたものを原料とするTabby(タビー)と呼ばれるセメントで4階建てのDungeness(ダンジェネス)と呼ばれる屋敷を築いたのが始まりである。1880年にカーネギー夫妻はカンバーランド島のほとんどを購入し、1884年にかつてダンジェネスがあった場所に59の部屋を誇る同じくダンジェネスと呼んだ屋敷ほか40の建物を築いた。しかし、1959年の火事で大破し、現在までそのままとなっている。また、島の別の場所には、カーネギー夫妻が息子のGeorge(ジョージ)夫妻のために1898年に建てた
Plum Orchard(プラム・オーチャード)が現存しており、豪勢な生活ぶりを今に伝えている。
ダンジェネス跡
ジャングルを抜けると丈の低い草原に変わり、やがて見渡す限り南北に一面に広がる砂浜に到着する。ここにはシギ類や
アメリカコアジサシなどの浜鳥がトコトコ歩き、スナガニなどのカニがさっと横切る。ミサゴやファルコンが空を舞う。この砂浜は、Loggerhead Turtle(アカウミガメ)の貴重な産卵場所にもなっている。見渡す限り続く大西洋は私たちがちっぽけな存在だということを感じさせてくれる。
(国立公園局のHP)
(国立公園局の地図)(PDF)