アラスカ一の都市アンカレッジの南西、コディアック半島の対岸に400万エーカー(1万6千km2)の雄大な自然が広がる。Lake Clark National Park & Preserve(クラーク湖国立公園・国立保護区)は、氷河によって形成された自然の彫刻作品とも言える国立公園である。
クラーク湖国立公園・自然保護区の北方にはアラスカ山脈、南方にはChigmit Mountains(チグミット山地)が北東から南西に向けて斜めに貫いている。これらの山々は、いずれも1万2千年前に後退した氷河によって荒々しく削られ、鋭い岩肌を見せている。氷河はVの字の峡谷を切り開き、谷に落し子のように多くの湖や池を残していった。また、クック湾側にはアリューシャン山脈に属する2つの活火山、
Redoubt火山(3108m)と
Iliamna火山(3053m)がそびえており、環太平洋火山地帯の一角を形成している。アンカレッジからのチャーター機は、チグミット山地の谷間をすれすれに飛行し、氷河の残した芸術作品を間近で鑑賞させてくれる。
クラーク湖国立公園・国立保護区の南西に長さ42マイル(67km)、幅5マイル(8km)の細長い湖が横たわっている。この湖がこのユニットの名前の由来となったクラーク湖である。クラーク湖の名称は、1890年にこの地を訪れたアラスカ商会のJohn W. Clarkの名前に由来するが、この地に900年前より住むDenai'na族の人々は、この湖をQizhjeh Vena(みんなが集まる湖)と呼んでいた。山からの雪解け水をたたえたTlikakila River(トゥリカキラ川)、Chokotonk River(チョコトンク川)などの川がアラスカで6番目に大きな湖に注ぎこみ、湖面は空から見ると氷河地帯の雪解け水特有の水色の絵の具を解いたような色彩を放っている。
トゥリカキラ川
この氷河が形成した芸術作品の中には、Dall Sheep、カリブ、ムース、グリズリーベアー、ブラックベアー、狼などの野生動物の宝庫となっている。自然そのままの河川や湖にはマス類などのほか、夏から秋にかけて身体を真っ赤にしたベニザケが遡上し、これを求めて釣り人やグリズリーベアーが集まってくる。クラーク湖国立公園・国立保護区を訪れる人の多くは、釣りを楽しむ人々である。
クラーク湖
Port Alsworth(ポート・アルスウォース)には、唯一の国立公園局のビジターセンターが置かれており、ここからは近くのTanalian Falls(タナリアン滝)を通ってKontrashibuna Lake(コントラシブナ湖)に至るトレールやTanalian Mountain(タナリアン山)に向けたトレールが整備されている。ただし、ここは熊が出る地域なので熊対策は十分に行なっておこう。(なお、クマ対策については、
Katmai National Park & Preserve(カトマイ国立公園・国立保護区)を参照のこと。)
タナリアン滝
コントラシブナ湖
また、公園中央部Twin Lakesのほとりには
Richard Proenneke(リチャード・プロエンネック)さんの
キャビンが残されている。通称Dick's Cabin(ディックの小屋)と称されるこのキャビンは、この地で電気も水道もなく1967年から1998年までの約30年間を一人で過ごしたプロエンネックさんが生活したそのままに残されている。彼は約30年間のフロンティアでの生活を詳細に記録しており、これが編集されて出版された本
(One Man's Wilderness: An Alaskan Odyssey )は米国で高い評価を受けている。フロンティア人の知恵が詰まったその住居と詳細に記録された暮らしぶりは、フロンティア生活の厳しさとロマンを今も伝え、多くのアメリカ人を魅了している。
使用したエア・タクシー:
Lake Clark Air
(国立公園局のHP)
(国立公園局の地図)(PDF)
レイク・クラークのきれいな写真は、
ここで見ることができます。
ポート・アルスウォースのロッジ:
Lake Clark Inn