シェナンドア国立公園からブルーリッジ・パークウェイを南に下ると、アパラチア山脈南部のノースカロライナ州とテネシー州の境に山深き国立公園が横たわる。これがGreat Smoky Mountains National Park(グレート・スモーキー・マウンテン国立公園)である。
グレート・スモーキーとの愛称から伺えるとおり、山々には雲がかかり、雲の煙をたたえる山々は荘厳な雰囲気を醸し出している。10万エーカー(400km
2)にわたる原生林が保存されている。野生動物も豊富で、ブラック・ベアーが多く住むところとしても知られている。
山から南東・北西にそれぞれ流れ出す川、Oconuluftee River(オコナルフティー川)とLittle Pigeon River(リトル・ピジョン川)に沿って縦断ルートが形成されている。これがUS441号線Newfound Gap Road(ニューファウンド・ギャップ・ロード)だ。その名前のとおり、新しくみつかった割れ目を意味し、1872年にスイス人技師Arnold Henry Guyotによって付近で最も低い峠として発見された。この峠にはロックフェラーの記念碑が建っている。1934年の国立公園の設立に当たり、付近の土地の買収のために500万ドル寄贈したのだとか。
この国立公園には全米一周旅行の途中で立ち寄ったのだが、ニューファウンド・ギャップ・ロードの坂道の途中で雲のたなびく姿を写真にとっていると、キャンピングカーに乗った老夫婦から写真をとってくれと頼まれた。聞いてみると、リタイヤしてキャンピングカーを買い、全米中を旅行している途中なのだとか。アメリカ人らしい老後の過ごし方と感心した。
グレート・スモーキーでは、ぜひトレールを歩きたい。特に滝に通ずるトレールが幾つもあり、自分の足と相談して歩いて見るとよい。私たちは、Trillium Gap Trail(トリリアム・ギャップ・トレール)をGrotto Falls(グロット滝)まで歩いた。往復2.6マイル(4km)の比較的短いトレールであったが、運動不足だったため、なかなか到着せず、途中沢のようなところ渡り、スニーカーを少し濡らしたものの、滝に着いたときには爽快な気持ちとなり、帰り道では他のトレッカーに「あと少し」などという余裕もできた。また、時間があれば、馬に乗ってみると、開拓者の気分に浸れるだろう。
グロット滝
この辺りは、元々Cherokee(チェロキー)族の土地であったが、アンドリュー・ジャクソン大統領(1829-1837)のときにミシシッピー川以東の原住民はオクラホマに強制移住させられた。チェロキー族14,000人も強制的に移住させられ、移動の6ヶ月の間に寒さ、飢え、病気などでその1/3を失ったという。この6ヶ月の旅路は、Trails of Tears(涙の道)と呼ばれ、歴史に刻まれている。このときにグレート・スモーキーに隠れて強制移住を免れたチェロキー族もいる。このグループの子孫は今もグレート・スモーキーの麓のノースカロライナ州の自治区に住んでいる。
公園内には、西部開拓時代の家、納屋、水車小屋などが数多く点在しており、大きな山々とのコントラストは、開拓時代を思い起こさせるに違いない。
(国立公園局のHP)
(国立公園局の地図)(PDF)
ここにきれいなグレート・スモーキーの写真が載っています。