イースター島のモアイ像は、誰がいつ何のためにどのようにして造ったか、多くの推測を呼び、そのユニークな姿とあいまって多くの人々を魅了して止まない。アリゾナの東南部にも、広大な制作現場で、巨大な岩石を相手に、数多くの作品を手がけているところがある。ただ、こちらの作り手は自然と時間であるが。それがここ、Chiricahua National Monument(チリーカウア国定公園)である。ここには、何本もの仕懸り品の石像が立ち並び、雄大なアトリエと化している。
この自然の彫刻は、2,700万年前の火山活動が始まりとなっている。火山活動は大量の灰を噴出し、その厚みは2,000フィート(600m)にも達した。これが冷却して固まり、分厚い流紋岩を形成した。それが長い年月の間の雨、風、氷による浸食作用で削られ、まさに自然の彫刻となったわけだ。
チリーカウアは、オパタ族の言葉で、七面鳥を意味する。この山にはかつて七面鳥が数多く住んでおり、原住民の格好の狩場だったそうだ。七面鳥は乱獲により絶えてしまったが、最近になり再導入された模様。この地域には、貴重なメキシコ産の種が多く見られ、自然には国境は関係ないことがわかる。
チリーカウアは、19世紀終わりには、アパッチ族の最後の抵抗の砦となり、近くのFort Bowie(ボウイ砦)に駐留する合衆国軍との闘争を繰り広げたが、1886年のジェロニモ率いる部隊の降伏により、原住民は居住区に移住させられ、空白地帯となった。そこにスウェーデン系移民のErickson(エリックソン)夫妻が移住し、農場と牧場を切り開いた。チリーカウアが人々に知られるようになったのは、エリックソン夫妻の娘Lillian(リリアン)と夫のEd Riggs(エド・リッグス)がここに宿泊施設(Faraway Ranch:ファラウェイ牧場)を構え、チリーカウアを探索し、それを各地で宣伝したことをきっかけとする。その跡は今も公園内に残っている。
ファラウェイ牧場
8マイル(13km)のドライブコースがあるので、これをドライブしながら不思議な岩の造形を楽しむことができる。ドライブではパイプ・オルガン、海の船長、チャイナ・ボーイといった名前のついた岩を見ることができる。
パイプ・オルガン
ドライブの終着は、Massai Point(マサイ・ポイント)と呼ばれる場所だ。ここからは眼下にまるで石の巨人たちが整列しているような絶景を見ることができる。一つ一つの石柱が違う形をしていて、まるでいろんな巨人が集められたようだ。
マサイ・ポイント
さらに時間があれば、トレールを歩いてHeart of Rocks Loopまでたどり着けば、さらに珍しい形の岩を見ることができる。
らくだの頭 年老いたメイド 石の上のあひる
名前のついていない岩も、何に似ているか想像して自分なりの名前をつけてみるのも楽しいだろう。
(国立公園局のHP)
(国立公園局の地図)(PDF)