ここAgate Fossils Bed National Monument(アゲート化石層国定公園)は、今は絶滅したおよそ2,000万年前の哺乳類の化石が大量に発掘された場所である。その地層は、地球のダイナミックな気候変動と生態系の変化を物語っている。
ロッキー山脈が隆起をし始めたころ、現在の中西部のプレーリーは亜熱帯の低地であった。徐々に、気温が下がり、湿度が下がり、西部での火山活動が大量の火山灰をこの地にもたらし、ちょうどアフリカのサバンナのような気候を作り出した。現在のアフリカのサバンナでもサイ、シマウマ、キリン、ガゼルなどの草食動物とそれを捕食するライオンなどの肉食動物が共存しているが、それと同じような状況がアメリカのプレーリーでも展開されていた。しかし、ロッキー山脈が徐々に隆起するにつれて、西からの湿った空気がさえぎられるようになり、プレーリーの気候は徐々に乾燥していった。今からおよそ2,000万年前には、旱魃が頻繁となり、小さな川は水が枯れ、水分を多く必要とする草木も枯れていった。動物たちは砂漠のオアシスに引き寄せられるように、なお水を湛える湖沼に引き寄せられていった。この水源で支えきれる草木にも限界があり、草食動物はえさとなる植物を食べつくし、力尽きていった。その後、降雨時に川が出現し、動物たちの遺骸の上に砂や泥をかぶせていった。こうして長い年月をかけて、ネブラスカのNiobrara(ニオブララ)川のほとりの浅い湖沼の跡に数多くの哺乳類の化石が形成されていった。
時は流れて、1880年代にこの一帯で牧畜を行っていたCook(クック)夫妻は、ここで動物の骨の化石を発見する。1892年にネブラスカ大学のErwin Barbour(アーウィン・バーバー)が科学者として初めてこの地を調査した。1904年にカーネギー博物館のO.A. Peterson(ピーターソン)はクック夫妻の息子Harold(ハロルド)の助けを借りて化石の骨が詰まった層を発見した。これにより、全米各地の博物館から調査隊が派遣され、数々の動物の化石が発掘された。しかし、これまでに25%程度しか発掘されておらず、残る75%はなお土の中に眠っていると推定されている。なお、Agate(アゲート)という名前は、公園内にある2つの丘からめのう(agate)が発見されたことに由来している。
左がUniversity Hill(ユニバーシティー丘陵)、右がCarnegie Hill(カーネギー丘陵)。これらの丘には、そこで化石を発掘したチームの名前がつけられている。(ユニバーシティーはネブラスカ大学。)
発掘された化石の一部は、ビジターセンターに展示されている。Menoceras、Moropus、Daeodon、Stenomylus、Daphoenodonと名づけられた、今から2,000万年前の動物の化石が発掘されている。どの古代の動物がどの現代の動物と似ているか想像してみよう。
(答えは、ここです。)
園内にはユニバーシティー・カーネギー丘陵へのトレールの他、Daemonelix Trailというらせん状のビーバーの祖先の巣穴の化石を見ることができるトレールが整備されている。
ビーバーの祖先の巣穴の化石
2,000万年前は、人間はまだ出現しておらず、今とは姿形の異なる動物たちが闊歩していた様子を創造するとわくわくすると同時に不思議な感じがする。これらの動物たちが気候変動により最後を迎えたことには、考えさせられるものがある。彼らは地球の自然の営みにより淘汰されることとなったが、人間は自ら気候変動の原因を作り出している。果たして人間はこれらの動物と同じ道を辿ることとなるのであろうか。
(国立公園局のHP)
(国立公園局の地図)(PDF)