サウスカロライナの中央部にそのジャングルはある。鬱蒼と茂った巨木の密林は訪れる者を寄せ付けない神聖さを誇る。ここは、Congaree River(コンガリー川)の氾濫で作られた氾濫原に茂る密林で、Congaree National Park(コンガリー国立公園)には、22,200エーカー(90平方キロ)に及ぶ、米国で氾濫原に生育する最大規模の硬木の原生林が保存されている。
※ コンガリー国立公園は、Congaree Swamp National Monument(コンガリー沼国定公園)が2003年に昇格されたもの。
コンガリー川
コンガリー国立公園のある地域は、平らかで、ほとんど起伏が無い。コンガリー川が公園の南の境界を流れるが、その流域23マイル(37km)で高低差が20フィート(6m)しかない。角度で言えば、0.015度しかない。冬季や春先に年間10回ほどコンガリー川は氾濫するが、周辺の土地は平らであるため、いったん洪水が起きると、水は行き場所がなく、いつまでも浅い水が周辺に漂うこととなる。コンガリーは、かつてこの地域に住んでいた原住民の名前で「底をこする」を意味する。一方で洪水は上流の豊かなミネラルと栄養素をもたらすため、コンガリーの多様な生態系を育んでいる。肥えた土は樹木の生育を促し、空高く成長した巨木が大地を覆い、密林を形成している。密林は、昆虫、爬虫類、両生類、鳥類、哺乳類を問わず、様々な生物の住処となっている。
Weston Lake Loop Trail(ウェストン湖周回トレール)
かつてはコンガリーのような氾濫原の密林が、サウスカロライナの東半分を覆い、19世紀後半でも5,200万(21万平方キロ)の氾濫原の密林が残されていたという。16世紀にこの地域を探検した
Hernando de Soto(ヘルナンド・デソト)の記録にもこの密林のことが残されている。しかし、1880年代には森林開発の手がこの広大な密林にも広がり、次々と原生林は伐採され、アクセスが不便であったコンガリー川の周辺のみが今日まで手付かずで残された。
この密林で特徴的な樹木は、
Bald Cypress(ヌマスギ)である。ヌマスギは、身長が150フィート(45m)に達するものもあり、堂々たる姿で空を覆っている。幹の周りに呼吸根が生え、湿った地面や川面から顔を出している姿がおもしろい。
ヌマスギ
この他にも
Loblolly Pine(タエダマツ)、
Cherrybark Oak(樹皮が赤い樫の木)、
アメリカ楡、
Water Tupelo(ヌマミズキの一種)などの樹木が生え、空を覆い隠している。
この公園を手軽に楽しむには、1周2.5マイル(4km)のボードウォークが整備されているので、それを周ることだろう。ジャングルの中をかきわけて進むような感じで、ふと隣の木を見るとヘビが巻きついていたりする。茂みの中には、野生の七面鳥が歩いていた。
ボードウォーク
じっくりとこの公園を楽しむには、カヌーやカヤックで自然に張り巡らされた水路網を掻き分けて進むのがよいだろう。Cedar Creek(セダー・クリーク)にはカヌー・トレールが整備されている。まさにアマゾンのジャングルを探検している気分に浸ることができる。
セダー・クリーク(上流部)
セダー・クリーク(下流部)
(国立公園局のHP)
(国立公園局の地図)(PDF)