戦いの前、交易の際、捕虜の交換の際、和平の交渉の際、宗教儀式の際、タバコで一服は、プレーリーの原住民にとって大切な儀式であった。タバコを吸う際に使用するパイプには、様々なデザインが施され、死亡した際には一緒に埋葬される宝物であった。このパイプを作成するのに使用する石切り場がミネソタ州の南西の隅にあり、Pipestone National Monument(パイプストーン国定公園)として国立公園局によって保存されている。
石で作ったパイプは、原住民の間で2000年前から使用されていたが、このミネソタ州の石切り場は、17世紀ごろからプレーリーに住む原住民によって採掘が始められた場所である。この場所は、やがて1700年ごろまでにはヤンクトン・スー族が支配するようになり、他の部族との交易の際、貴重な交換物件となった。パイプストーンの取れる採石場は原住民にとって神聖な場所であり、1858年の居留区への移住交渉で、ヤンクトン・スー族にとって、パイプストーンの採石場が居留区に含まれることが絶対の条件であった。
採石は、地層から水が染み出ない夏の終わりから秋にかけて行われた。パイプストーンの上には珪岩の地層が覆いかぶさっており、比較的柔らかいパイプストーンを痛めないよう慎重にハンマーで珪岩を割り、その下にある3cmから10cmの薄いパイプストーンの層を取り出す。ここはかつて浅い海辺で、粘土層の上に砂が堆積し、長い年月をかけて、砂が珪岩に、粘土層がパイプストーンに変化したものである。取り出したパイプストーンは、鋭く硬い石を用いてパイプの形に切り出し、角を丸め、スムーズな表面となるよう硬い石で磨きをかける。火打ち石が先についたハンドドリルで穴を開け、表面に彫刻を施し、最後は砂で磨きをかけて完成させる。取っ手は硬材で製作され、色が塗られたり、彫刻が施されたり、動物の毛やビーズで飾られたりした。
パイプストーン
ビジターセンターの裏にあるCircle Trail(サークル・トレール)をたどると、パイプストーンの採石場を訪れることができる。トレールの最初と最後にパイプストーンの採石場があり、これらの採石場では現在でもパイプストーンの採掘が行われている。
採石場
トレールの中ほどでは、珪岩が立ち並ぶ岩の森の間を縫って歩くことになる。
ここには人の顔の形をしたOld Stone Face(オールド・ストーン・フェイス)やスー族の若者が飛び移って(女性に)勇気を示したLeaping Rock(リーピング・ロック)がある。
リーピング・ロック
同じく人の顔の形をしたOracle(オラクル)は神聖な場所として崇められた場所である。採石期間中は、供え物が置かれた。
オラクル
Winnewissa Falls(ウィネウィッサ滝)には、神が周辺部族を集めて和平を誓わせた場所という神話が残っている。
ウィネウィッサ滝
ビジターセンターには、ここで採掘されたパイプストーンを加工して製作された見事なパイプが販売されている。愛煙家の方はお土産にいかが。
(国立公園局のHP)