カナダのブリティッシュ・コロンビア州に発し、アラスカ半島を横断し、1,980マイル(3,190km)の旅を終えてベーリング海へと注ぐ大河、Yukon River(ユーコン川)。ユーコンは、Athabaskan(アサバスカン)族の言葉で文字通り「大河」を意味するアラスカを代表する川である。アラスカの東部、カナダとの国境近くに、ユーコン川流域の一部と清流で知られるその支流Charley River(チャーリー川)の全流域を保護する国立保護区がある。Yukon-Charley Rivers National Preserve(ユーコン/チャーリー川国立保護区)は、ベーリング海のサケもパドラーも目指す場所である。
Yukon-Charley Rivers National Preserve(ユーコン/チャーリー川国立保護区)は、ユーコン川のうち、カナダとの国境の村EagleからCircleまでの間に位置する128マイル(206km)の区間を保護する。この区間は針葉樹林の山に囲まれ、豊かな自然の様相を見せる。ユーコン川は、この区間をラフト、カヌー、カヤックなどによってEagleからCircleまでの区間を5-7日間かけて下るのが人気である。流域には、キャビンが点在し、先着順に使用することが可能となっている。
1886年にユーコン川の支流のFortymile River(40マイル川)で金が発見されると、ユーコン川流域に各地より一攫千金を求める人々が集まった。この保護区の区域内でもFourth of July Creek、Sam Creek、Ben Creekといった支流で金が発見され、流域には一夜城ならぬ、一夜町が出現した。EagleやCircleもその頃できた町である。1902年に金の発掘がフェアバンクスに移る頃には、Coal Creek、Woodchopper Creekでの採掘を除き、すっかり採掘者達はこの地を立ち去ってしまった。最後の採掘場であったCoal Creek Dredgeも1977年に操業の幕を下ろした。
平原の中央を流れるコバック川は、Gates of the Arcitic National Park & Preserve(北極の扉国立公園・国立保護区)内に源流を持ち、280マイル(451km)西から東に蛇行しながら緩やかに流れ、Kotzebue Sound(コッツビュー湾)に注いでいる。コバックは、Inupiaq Eskimoの言葉で「大きな川」を意味する。その支流、Salmon River(サーモン川)は自然のままの原流として知られている。コバック川の流域には、かつての洪水の跡、永久凍土の融解、川の流れの変化によって、無数の湖や池が点在する。ノアタック川と同様に緩やかに流れるコバック川には、1週間ほど時間をかけて、上流のAmbler(アンブラー)の村から下流の Kiana(キアナ)の村までカヤック、カヌー、ラフトで川下りを楽しむ人がいるという。
コバック川
コバック・ヴァレー国立公園で有名なのは、その南部、ワーリング山地の麓に広がる砂丘である。公園内にはGreat Kobuk Sand Dunes(大コバック砂丘)、Little Kobuk Sand Dunes(小コバック砂丘)、Hunt River Sand Dunes(ハント川砂丘)の3つの砂丘が数えられるが、最も規模が大きく訪れる人に人気なのは大コバック砂丘である。
ミネソタ州のLake Itasca(イタスカ湖)に始まり、2,340 マイル(3,766 km)を南に下り、メキシコ湾に注ぎ込むミシシッピー川。ミシシッピー川には250の支流が注ぎ込み、その流域は、東はアパラチア山脈、西はロッキー山脈に伸び、31の州に及ぶ。ミシシッピーは、水源近くに住むOjibwe(オジベ族)の言葉で巨大な、あるいは偉大な川を意味すると言われている。Father of Waters(全ての水の父)の愛称どおりの巨大な河川システムとなっている。このうち、水源に近い上流区域のうち、地域の公園が連続する、ミネソタ州の大都市ミネアポリスとセント・ポールを中心とする南北72マイル(115km)がMississipi National River and Recreation Area(ミシシッピー国立河川・レクリエーション地域)に指定されている。このうち国立公園局が管理する部分はわずかで、大半はミネソタ州や地元自治体が管理するエリアと私有地で占められており、国立公園局はミネソタ州や地元自治体と共同でこの公園の運営に当たっている。
ミシシッピー国立河川・レクリエーション地域は、ミネソタ州のRamsey(ラムゼイ)の町辺りから始まり、その沿岸に次々と地元自治体により公園が設定され、付近の住民に緑の場が提供されている。Coon Raipds Dam(クーン急流ダム)の周りにはトレールが設定され、ハイキングや自転車を楽しむことができる。クーン急流ダムはもともと1913年に発電用に建設されたが、その後改修され、現在では水位調整に使用されている。その南のAnoca County Riverfront Regional Park(アノカ郡リバーフロント地区公園)や対岸のNorth Mississippi Regional Park(北ミシシッピー地区公園)などは散歩やサイクリングによい場所となっている。
クーン急流ダム
ミネアポリス市街では、St. Anthony Falls(セント・アンソニー滝)周辺が見所となっている。セント・アンソニー滝は、1680年にナイアガラの滝をヨーロッパ人で最初に目撃したことで知られるLouis Hennepin(ルイス・ヘネピン)神父によって名付けられた滝で、従来ミシシッピー川航海の北限とされた場所である。1847年にFranklin Steele(フランクリン・スティール)がこの急流の力を利用して製材所を始めたのが最初で、彼の成功に刺激され、次々と製材所や製粉所が立ち並んだ。ミネアポリスの町の始まりである。ミネアポリスは、19世紀終わりから1930年ごろにかけて、アメリカの小麦製粉の首都として栄え、現在ではMill City(製粉所の町)として昔の町並みが残されている。
ミシシッピー川が丁度大きく湾曲する場所には、英米戦争後にカナダからの侵略への備えとして建設されたFort Snelling(スネリング砦)や最初のミネソタ州知事となるHenry Hastings Sibley(ヘンリー・ヘイスティング・シブリー)が1836年に建てたミネソタ最初の石造りの家であるSibley House(シブリーの家)などを見ることができる。スネリング砦は第2次世界大戦中に日本語の特殊教育が行われた場所でもある。スネリング砦の周囲は、Fort Snelling State Park(スネリング砦州立公園)としてハイキングや自転車などを楽しむ場所となっている。
スネリング砦
セント・ポールの近くには、散歩に適したHidden Falls - Crosby Farm Regional Park(ヒドゥン・フォールズ=クロスビー農場地区公園)、ホープウェル文化の原住民が築いた6つの塚が集まるIndian Mounds Park(インディアン・マウンズ公園)などがある。さらにその先にはバードウォッチングで人気のBattle Creek Regional Park(バトル川地区公園)やかつては湖に面していたSpring Lake Park Reserve(スプリング湖公園保護区)などの緑の場所もある。
ワイオミング州のロッキー山脈の山中から東に430マイル(692 km)流れ、ミズーリー川と合流する川、Niobrara River(ニオブララ川)。そのうちのネブラスカ州北部中央部を流れる一部区間76マイル(120km)がNiobrara National Scenic River(ニオブララ国立景観河川)に指定され、開発から保護されている。ネブラスカというと単調でフラットな砂丘のプレーリーが続く風景が想像されるが、ニオブララ国立景観河川に指定されている区間の付近は、ロッキー山脈の松林、東部落葉樹林、寒帯針葉樹林、プレーリーの草原の4つの異なる植物相が交じり合った場所となっており、160種類の植物と250種類以上の鳥類が見られる多様な生態系を形成している。
ニオブララ川の楽しみ方は、カヌー、カヤック、チュービングなどによる川下りであろう。西のCornell Bridge(コーネル橋)からCounty Line Bridge(カウンティー・ライン橋)まではときおりクラスI又はIIの急流があるほかは、比較的ゆったりと流れており、ゆっくりとチュービングで下るのに適したコースとなっている。その先は、クラスIIIのRocky Ford Rapid(ロッキー・フォード急流)、クラスIVのNorden Chute(ノーデン・シュート)ではポーテッジを勧められている。Norden Bridge(ノーデン橋)から東の区間は、砂州が続く浅瀬であり、川下りにはあまり向かない。
アメリカで一番長い川は何かと問われれば、多くの人がミシシッピー川と答えるだろう。しかし、答えは違う。モンタナ州に発して南東に流れ、セントルイスの北でミシシッピー川に接続するMissouri River(ミズーリー川)の方が長い。ミズーリー川は途中短絡ルートを設定しているが、それでも2,341マイル(3,767km)で、ミシシッピー川より1マイルほど長い。オリジナルの長さだと、2,565 マイル(4,128 km)に達する。このアメリカで一番長い川、ミズーリー川のうち、サウスダコタ州とネブラスカ州の東部の州境となっている部分がMissouri National Recreational River(ミズーリー国立レクリエーション河川)に指定されている。ミズーリー国立レクリエーション河川には、ミズーリー川の支流であるNiobrara River(ニオブララ川)の下流20マイル(32km)とその支流Verdigre Creek(ヴェルディージャ川)8マイル(13km)が含まれている。
ミズーリー国立レクリエーション河川は、中央にGavins Point Dam(ギャビンズ・ポイント・ダム)によって堰き止められてできたLewis & Clark Lake(ルイス&クラーク湖)を境に東側59マイル(94km)と西側39マイル(62km)の地区に分かれている。この東西の地区で風景はがらっと変わり、東側は比較的降水量が多いため森林地帯が広がるのに対して、西側は乾燥したプレーリーの草原が広がる。ミズーリー国立レクリエーション河川では、カヌーやフィッシングなどを楽しめるほか、このルートはルイス&クラーク探検隊がたどったルートであるため、彼らの探検日誌に登場するランドマークが点在し、さながらウォーター・レクリエーションを楽しむ国立河川というより、ルイス&クラーク探検隊の歴史を辿ることができる国立歴史公園のような趣がある。
デラウェア川は、アメリカ東部では珍しい、堰止められることなく自由に流れる河川で、カヌー、フィッシングなどのレクリエーションの機会を与えてくれる。Middle Delaware National Scenic River(ミドル・デラウェア国立景観河川)は、デラウェア川のうち、Delaware Water Gap National Recreation Area(デラウェア・ウォーター・ギャップ国立レクリエーション地域)の中に含まれる40マイル(64km)部分を指している。ミドル・デラウェア国立景観・レクリエーション河川は、デラウェア・ウォーター・ギャップ国立レクリエーション地域の中に含まれながら、デラウェア・ウォーター・ギャップ国立レクリエーション地域とは別の国立公園ユニットとして数えられている。
アラバマ州の北東部は、平地が多い南部には珍しく山地となっている。ここにはテネシー州南部、ジョージア州北部から南北戦争の戦場として有名なLookout Mountain(ルックアウト山)が延びて来ているためである。このルックアウト山地の真ん中をその尾根に沿って流れる川がある。川の名前は、Little River(リトル・リバー)。普通川は高いところから低いところに、山から平地に向かって流れるが、この川はそのほとんどが山の中を流れる珍しい川である。このリトル川がルックアウト山地を刻んだ峡谷がLittle River Canyon(リトル・リバー峡谷)である。リトル・リバー峡谷は、Little River Canyon National Preserve(リトル・リバー峡谷国立保護区)として保護されている。
普通の人は、リトル・リバー峡谷の西側の縁に沿って23マイル(37km)のCanyon Rim Drive(キャニオン・リム・ドライブ)をドライブすれば、8箇所の展望所が途中に設けられており、リトル・リバー峡谷の景色を楽しむことができる。
リトル・リバー峡谷
リトル・リバー峡谷の北側には、45フィート(14m)の落差があるLittle River Falls(リトル・リバー滝)があり、観光ポイントの一つとなっている。自然保護区の中ほどにも、リトル・リバーの支流であるBear Creek(ベアー・クリーク)にもGraces High Falls(グレイセズ・ハイ滝)と呼ばれる滝がある。
リトル・リバー滝
リトル・リバー峡谷に下りるポイントは、Lower Two Mile Trail(下2マイルトレール)、Eberhart Point(エバーハート・ポイント)、Canyon Mouth(キャニオン・マウス)の3箇所ある。これらのポイントから弁当を持って下り、川に着いたら岩の上でピクニックをするのもいいかもしれない。いずれにせよ峡谷に下りるには結構急な下り坂を下りていかなければならない。カヤックを楽しむ人々はカヤックをかついでこの坂道を下りるのだから、その魅力を推して測ることができる。